今後、10人に1人はかかるであろう相続税をはじめ、
税金にまつわるあれこれを、わかりやすくお伝えしていきます。

’05.12 1 あなたの相続人は誰?
’05.12 2 誰がいくら貰えるのか? あなたが貰える相続分は?
’06.01 3 財産がどのくらいあると相続税がかかるの
’06.02 4 借金も相続するの?
’06.03 5 財産がある人もない人も遺言を!
’06.04 6 遺留分ってなに?
’06.05 7 相続税関係の手続はいつまでに何をすればよいのか?
’06.06 8 遺産分割はどのようにしたらよいのか?
’06.07 9 養子縁組と相続税のお話
’06.08 10 先妻との間の子供・愛人との間の子供のお話
’06.09 11 相続時における預貯金の名義変更手続きのお話

’06.10 12 配偶者は大事にされています
’06.11 13 相続税と贈与税、どちらが有利?(その1)
’06.12 14 相続税と贈与税、どちらが有利?(その2)
’07.01 15 相続税と贈与税、どちらが有利?(その3)

’07.02   干支に思う
’07.03 16 土地活用と相続税対策
’07.04 17 不動産を共有名義にする場合の注意点
’07.05 18 相続人であっても相続できない人がいる?
’07.06 19 生命保険を利用した相続税対策(その1)
’07.07 20 生命保険を利用した相続税対策(その2)
’07.08 21 相続人の中に未成年者がいる場合の遺産分割協議
’07.09 22 相続放棄についての注意点
’07.10 23 名義預金等にご注意を!
’07.11 24 認知があった場合の相続権
’07.12 25 親族間で売買する場合には低額譲渡にご注意を!

  

2005.12

「うちには財産なんか無いから相続なんて関係ないよ」
「うちの家族はみんな仲も良いし、相続でモメルなんて考えられないよ」
こんなふうに考えているアナタ!
他人事ではありませんよ!



1 あなたの相続人は誰?

 現在相続が発生した場合、約20人に1人の方が相続税を納めるようになっています。しかし政府はここ最近の税収不足を補うために、10人に1人に相続税がかかるようにしようとしています。10人に1人というと、ご近所さんでも結構多くの方が相続税を支払うことになるでしょう。こうなるととても他人事とは言えませんね。

★相続人には誰がなれるの?
 
それでは果たして相続人になれる人はどんな人なのでしょうか? 故人(被相続人と言います)の親族なら誰でも相続人になれるというわけではありません。被相続人が遺言書を残していれば、遺言書に書かれた人が相続する権利を取得しますが、遺言書がない場合は、次の順番により相続人が決まります。
 被相続人に配偶者がいれば配偶者は必ず相続人となります。但し、いわゆる内縁の妻(夫)は相続人にはなれませんのでご注意を。さらに配偶者の有無に関わらず、被相続人に直系の子孫(子・孫・曾孫…)がいれば直系の子孫も相続人となります。なお、実子のほか養子・胎児も相続人となれます。
 そして直系の子孫がいない場合に限り、被相続人の直系の父母等(父母・祖父母…)へ、さらに直系の父母等もいなければ被相続人の兄弟姉妹へというように、相続人は民法によって順番が定められているのです。
★相続人がいないと財産はどうなるの?
 被相続人に配偶者などの相続人がいない場合や行方不明の場合には、一定期間内に被相続人と生計を同じくしていた人(内縁関係者)や、療養看護に努めた人などが、家庭裁判所に対して特別縁故者に対する相続財産分与の申し立てをすることができます。そして家庭裁判所が認めれば、相続財産の全部または一部が特別縁故者に与えられ、残りは国にとられてしまいます。
 もし相続人がいない場合、身内のようにお世話をしてくれた人や看護してくれた人に財産を贈る旨の遺言書を残しておけば、相続人となり得ない人にも財産をあげることができるのです。

★被相続人に多額の借金がある場合にはご注意を!
 相続と言うと財産をもらうことばかりが注目されますが、相続をするとプラスの財産はもちろん、マイナスの財産(借金等)も同時に相続します。もしプラスの財産よりもマイナスの財産が多い場合には、相続を放棄すればプラスの財産はもらえませんが、マイナスの財産も引継ぐ必要がありません。また借金があることは分かっているが、プラスの財産とマイナスの財産のどちらが多いか分からない場合には、限定承認(プラスの財産を限度にマイナスの財産を相続する)をすることもできます。
 なおどちらの場合も、被相続人が亡くなってから3ヶ月以内に家庭裁判所に申し出る必要があります。
 

2005.12

2 誰がいくら貰えるのか? あなたがもらえる相続分は?
 もしあなたが相続人だとすると、「財産をどれだけ貰えるのか?」というのが一番気になるところだと思います。今回は相続人の取り分(相続分)についてお話したいと思います。
 亡くなった方が遺言書を残していれば、原則として遺言書の内容に従って財産を分割します。遺言書がない場合には、相続人の間で遺産分割協議を行い、話し合いがまとまればどのような取り分で分割しても構いません。遺産分割協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に調停・審判を申し立て、「法定相続分」を基準として分割することになります。

★遺留分って何?
 
例えば「愛人に全財産をあげる」という遺言があってもその遺言自体は有効です。しかしそれでは残された家族の生活が立ち行かなくなるという事態も起こり得ます。このようなあまりにも相続人に不利益な事態を防ぐため、民法では遺産のうち一定割合を相続人に保証する制度を規定しています。遺留分は、相続人が配偶者
・子の場合は法定相続分の2分の1。父母・祖父母のみの場合は法定相続分の3分の1となっています。兄弟姉妹には遺留分はありません。

2006.01
3 財産がどのくらいあると相続税がかかるの??

 莫大な財産を残すような資産家は、もともと相続税を納める覚悟をしていますし、そのための事前対策も熱心に取り組んでいるはずです。しかし、主な財産は自宅だけ、あとは預貯金が少しあるくらい…というのが一般的だと思います。この場合、果たして自分は相続税を納税する義務があるのだろうか?と気になるところだと思います。今回は、「財産がどのくらいあると相続税がかかるのか?」についてお話ししたいと思います。
 皆さんの中には、相続で財産をもらったら相続税を必ず払わなければならないと思っている方も多いのではないでしょうか?しかし、相続税は遺産の総額がある一定額を超えた人のみ支払えばよいことになっているのです。その金額はいくらかといいますと次の通りとなります。
 もし相続財産が基礎控除額以下の場合、相続税を納める必要がないのはもちろんのこと、相続税の申告書を提出する必要もありません

 
しかし、「小規模宅地等の特例」などの特例措置を使って相続財産が基礎控除額以下になった場合、相続税を納める必要はありませんが、申告書の提出が必要となります。これらの特例措置についてはまた後日説明します

★いつまでに申告すればいいの?
 相続税を申告する必要がある場合は、被相続人の亡くなった日の翌日から10ヶ月以内に、死亡した方の住所地の所轄税務署に申告する必要があります。

2006.02
4 借金も相続するの?

 被相続人が死亡すると、相続人はその人が有していた全ての「権利」及び「義務」を承継します。不動産をはじめ、預貯金、有価証券等のプラスの財産はもちろん、借金等のマイナスの財産も当然に引き継がなければならないのです。ですから、相続財産があって良かった! と思うのは早計です。「莫大な借金を相続して人生を棒にふってしまった…」なんてことにならないように、相続があったらまず借金が無いかどうかを確認する必要があるでしょう。

★借金が多いから相続なんかしたくない!
 こんなときは相続を「放棄」することも出来ます。放棄をする場合には、相続の開始を知った日から3ヶ月以内に、家庭裁判所に「相続放棄申述書」を提出しなければなりません。放棄は相続人が複数いる場合でも、自分1人の意思で自由にすることができます。なお相続の放棄をすると、他の相続人の相続分が増えるのはもちろん、相続順位が変わってしまうことがあり、新たな問題が発生する可能性があります。また、生前に相続人に相続を放棄する旨の約束をさせても法律的には無効です。

★限定承認ってなに?
 「相続によって取得した財産を限度に、相続した借金を支払います」という相続の方法です。この方法によれば、相続人は自己の財産を処分してまで、相続した借金を返済する必要はないということです。この制度は、相続した財産が果たしてプラスなのかマイナスなのか分からない場合に利用されます。限定承認をするには、相続の開始を知った日から3ヶ月以内に、家庭裁判所に「限定承認の申述審判申立書」を提出しなければなりません。限定承認は相続人が複数いるときには、相続人全員(相続放棄者を除く)が共同で申し立てなければなりません。よって1人でも反対者がいると限定承認の申し立ては出来ません。また、税金上の問題があり、限定承認をする場合には必ず専門家に相談することをおすすめします。

2006.03
5 財産がある人もない人も遺言を!

「財産があったばかりに…」とか「親が死ぬと兄弟仲が悪くなる」という話はよく耳にします。相続が発生したときの最も悲しい出来事は、残された相続人である妻や子供たちの間で争いが起きることではないでしょうか?
 このように相続がきっかけとなって、「兄弟は他人の始まり」になるケースは少なくありません。「私の子供たちだから大丈夫…」と考えたいのですが、実の兄弟だからこそ言いたいことも言い、一度争いがおきればその根は非常に深いのです。
 あなたがいくら生前に相続対策をして、多くの財産を残したとしても、その財産を巡って親族同士が争いとなってしまっては本末転倒ですね。お金や土地・建物などの財産を残すことも確かに大切かもしれませんが、それ以上に「円満な相続を残すこと」が残された家族にとっては最も大切な財産だと言えるのではないでしょうか?
 ではどうすれば「円満な相続」を残すことができるのでしょうか? 家庭環境は人それぞれ、本当に様々ですので、これでOK!といった方法論は存在しません。しかし、確実に言えることは「円満な相続」はあなた自身が用意しないと実現できないということと、用意すれば大成功といかないまでも最悪の事態にはならないということです。
 もし、もめることが予想される場合には、「遺言(公正証書遺言がベストです)」を作成するだけで相続人同士の争いを未然に防ぐことができるのです。なぜならこれらの争いの大部分が、故人が意志表示をハッキリしていなかったために起きているためです。「遺言」さえあれば(多少不満があったとしても)故人の意志ということで納得できる場合もあるでしょう。「遺言」で故人の意志を明確にし、争いを未然に防ぐことも残された家族に対する思いやりと言えるのではないでしょうか?
 また、常日頃奥様や子供たちに面と向かって言えないような恥ずかしい言葉も、「遺言」という形をとることにより、あなたの家族に対する本当の気持ちを伝えることが出来るのではないでしょうか?
 生前に意志を伝えてある場合も、伝えられなかった場合はなおさら、「遺言」はあなたの意志をきちんと伝える最後のチャンスと言えるのではないでしょうか?

2006.04
6 遺留分ってなに?

遺留分とは、一言でいえば「相続人に保障された最低限の権利」のことです。
 遺言書を作成すれば、法定相続人以外の人に全ての財産をあげてしまうことも可能です。しかしそんなことになれば、残された家族が住む家を失い、路頭に迷うことにもなりかねません。このように相続人にとってあまりにも理不尽な事態を防ぐため、国は法律で遺産の一定割合を相続人が取得する権利を保障しているのです。また、上記のような相続人の遺留分を侵害するような遺言であっても、当然に無効となるわけではありません。自己の遺留分の範囲まで財産の返還を請求する『遺留分減殺請求』がされるまでは、遺言として有効に効力を有するのです。
 気になる遺留分の割合ですが、原則として通常の法定相続分の2分の1と考えればOKです。例外としては、兄弟姉妹には遺留分がないことと、法定相続人が直系尊属だけの場合には、法定相続分の3分の1となることです。

★「遺留分減殺請求」の手続はどうするの?
 特別な手続きは必要なく、遺留分減殺請求権を有する人が各自で遺留分を侵害した相手方に対して「遺留分を侵害されているので減殺を行う」旨の意思表示を行えば効力が生じます。後日の証拠となりますので、配達証明付きの内容証明郵便で行うとよいでしょう。この減殺請求権は、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った日から1年を経過すると時効により消滅します。また、相続の開始があったことを知らなかった場合でも、相続の開始から10年で時効により消滅します。 
 遺留分減殺請求が行われると、その対象となる贈与や遺贈は、遺留分を侵害した範囲でその効力を失い、遺留分の権利者がその権利を取得します。その後話し合いがまとまらないような場合には、家庭裁判所で調停、審判ということになります。
 遺言書を作成する場合、相続争いを防ぐ意味でも、遺留分を十分考慮したうえで作成したほうがよいでしょう。

★こんな時には遺言を!
 夫婦間に子供がいないため相続人は妻と夫の兄弟である場合で、財産は夫の兄弟に分けずすべて妻に残したい場合、もし遺言書がないと必ずもめます。この場合には「妻に全財産を与える」という遺言を残すようにします。そうしないと、兄弟(妻にとっては全員他人!)が相続人として加わってくることになり、財産の4分の1は兄弟が相続の権利を有することになります。しかし「全財産を妻に与える」という遺言さえあれば、夫の兄弟は遺留分がありませんから、すべての財産は妻のものとなるのです。

2006.05
7 相続税関係の手続はいつまでに何をすればよいのか?

 相続が発生し、通夜や葬儀が行われ、関係各所に死亡の届けを出し…一段落する間もなく、次から次へと相続税関係の手続きや判断を要する問題が発生してきます。頭の痛いところですが、期限内に手続を行わないととんでもない不利益を受ける場合もありますので要注意です。今回は相続税関係の「手続きとその期限」についてお話したいと思います。

★3ヶ月以内に〜相続の放棄・限定承認
 この紙面でも何回かお話しておりますので、詳しい内容は割愛させていただきますが、「相続放棄」「限定承認」の意思表示は、相続の開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述することが必要であり、これをしないと自動的に「単純承認」したものとみなされ、被相続人の全ての財産・債務を継承することになります。被相続人に多額の借金がある場合等には要注意です。

★4ヶ月以内に〜所得税の準確定申告
 所得税の確定申告が必要な人が死亡した場合には、その年の1月1日から死亡の日までの期間の所得税を亡くなった本人が申告することが出来ません。この場合、相続人が相続の開始を知った日の翌日から4ヶ月以内に、死亡した人の確定申告(これを準確定申告といいます)をしなければなりません。

★10ヶ月以内に〜相続税の申告・納付
 相続税がかかる場合には、相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に相続人「全員」が相続税の申告・納付をしなければなりません。相続税を現金で納付することができればよいのですが、もし土地ばかりを相続して現金がないような場合には、相続税の分割払いである「延納」や相続財産そのもので納める「物納」も可能ですが、これも10ヶ月以内に申請書を提出し許可を受けなければならないので、納税方法についても早い段階で決めておく必要があるでしょう。
 また、相続税が安くなる「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地の評価減」等の特例は、遺産分割協議が整っていることが前提となっているため、10ヶ月以内に分割協議が整っていない場合には、特例の適用ができないこととなります。しかし、その後3年以内(つまり3年10ヶ月以内)に分割協議が整えば、その時に特例を適用した申告内容に訂正して申告することにより、払い過ぎた相続税を戻してもらうことができます。

2006.06
8 遺産分割はどのようにしたらよいのか?

 今回は遺産分割協議についてお話します。 遺産分割は遺言書があれば遺言書に従うことになりますが、遺言書がない場合、相続人全員の話し合いで「誰がどの財産をどれだけもらうのか」を決めなければなりません。相続人全員が参加しこれを協議することを、「遺産分割協議」と言います。
 ところで、遺産は法定相続分で分けなければいけないと思っていませんか? しかし相続人全員の合意がありさえすれば、法定相続分に関係なく遺産をどのように分けても自由なのです。しかし、相続人の中に1人でも合意しない人がいれば、遺産分割協議は成立しません。遺産分割に期限はありませんが、分割協議が成立しない限り土地建物などの名義変更や、預貯金も解約できないことになります。
 話し合いがどうしてもまとまらない場合には、家庭裁判所による調停・審判によって分割することになります。これは裁判の確定判決と同じ効力をもっていますので、相続人は必ず従わなければなりません。
★遺産分割の方法
 分割方法には左記のように様々な方法があります。これらを組み合わせて遺産分割を行います。

  1. 現物による分割 「土地は妻、家屋は長男」というように、特定の財産を特定の相続人が相続する方法です。
  2. 共有による分割 「土地は妻と長男が2分の1ずつ相続する」というように、財産の全部または一部を共有で相続する方法です。この方法によると、売却時に共有者全員の実印と印鑑証明が必要となり売却が困難になる場合も考えられます。
  3. 代償分割 「長男1人で土地建物を相続する。その代わりに長男は二男と三男に金銭を支払う」といった分割方法です。
  4. 換価分割 財産を売却して現金化し、その現金を分ける方法です。


★遺産分割協議書の作成
 分割案に全員の同意が得られたら、遺産分割協議書の作成に入ります。この協議書には相続人全員が署名し、実印を押印します。未成年者の場合は特別代理人が署名・押印することになります。なお、遺産分割協議書の原本を相続人全員が保管できるよう相続人の人数分作成するのが一般的です。
 遺産分割は相続人の話し合いで決めるのはもちろんですが、分割のやり方次第で相続税がかなり減額できるケースもありますので、専門家からアドバイスをうける事も必要だと思います。

2006.07
9 養子縁組と相続税のお話

 養子縁組をして相続人を増やせば相続税が安くなる。こんな話を聞いたことがあるかもしれません。確かに安くなる場合もあります。
 それではなぜ安くなるのでしょうか? 実は相続税を計算する際、相続財産から差し引くことができる基礎控除額というものがあります。
[基礎控除額=5千万円+1千万円×法定相続人の数]
例えば、相続人が妻と子1人ですと基礎控除額は[5千万円+1千万円×2人=7千万円]です。養子縁組により法定相続人が1人増えると、基礎控除額は1千万円増えて8千万円になります。この基礎控除額が増えることにより、税金の対象となる相続財産が減少し、相続税が安くなるといった具合です。
養子縁組をすると・・・

  1. 法定相続人が1人増えるごとに基礎控除額が1千万円増える。
  2. 死亡保険金、死亡退職金の非課税限度額が、法定相続人が1人増えるごとに5百万円増える。
  3. 相続人1人当り法定相続分が減少するため、累進課税である相続税の場合、法定相続分が少なくなればなるほど税率自体が下がり、それに応じて相続税も安くなります。


 それでは養子の数をもっと増やせば節税になると思いますよね? 考えることは皆同じで、その昔孫全員を養子にするような節税手法が横行したため、税制改正で法定相続人の数にカウントする養子の人数は次のように制限されてしまいました。

  1. 被相続人に実子がいる場合は1人まで
  2. 被相続人に実子がいない場合は2人まで

なお、この制限は相続税額を計算する上での制限であり、民法自体に養子の数を制限する規定はありませんので、上記以上の養子縁組をして財産を相続させること自体は可能です。孫を養子にして財産を相続させれば、相続自体が一世代飛ぶこととなり、節税メリットがあります。しかしメリットばかりではなく、孫を養子にした場合、孫の相続税負担額が2割増となる場合があったり、孫が相続人として財産を相続する権利が発生し、遺産分割協議の際トラブルが発生する可能性もあります。養子縁組をする場合、これらのトラブル回避するためにも遺言書が必要となるでしょう。

2006.08
10 先妻との間の子供・
  愛人との間の子供のお話

 夫が亡くなった後、戸籍謄本をよくよく調べてみたら先妻との間に子供がいた。こういったことはあなたにも起こり得ることです。先妻との間の子供も後妻との間の子供も、正式な婚姻関係にある夫婦の間に生れた子供であり、法律的には「嫡出子」と言い、相続の権利は同等です。したがって、先妻との間の子供だから財産をもらう権利はないとは言えません。もちろん、先妻との間の子供が相続開始後に財産はいらないと相続を放棄することは可能です。しかし、相続開始前に先妻との間の子供に、相続を放棄する旨の念書を取ってあったとしても法律的に効力はありません。また、別れた先妻との間の婚姻関係はすでになくなっていますので、当然先妻に相続の権利は有りません。
 夫が亡くなった後、遺言書を見ると愛人との間の子供を認知していた(遺言で認知をすることが出来ます)。こんなことも絶対に無いとは言い切れません。正式な婚姻関係にある夫婦間に生れた「嫡出子」に対し、内縁関係、つまり正式な婚姻関係にない男女間に生れた子供を「非嫡出子」と言います。そしてこの非嫡出子にも相続の権利はあります。しかし同等の権利ではなく、非嫡出子は嫡出子の2分の1の相続の権利を持ちます。
 愛人との間の子供は、父親の認知によって非嫡出子となります。父親が認知する前に死んでしまった場合や父親が認知をしない場合には、強制認知(民法787条)の裁判によって認知してもらうことができます。
 先妻との間の子供にせよ愛人との間の子供にせよ、後々親族間での問題が発生することは必至です。いずれにしても父親としての自覚と責任で、自分が死んだ後の相続争いを見越し、遺言書などでしかるべき財産分与の方法を残しておくことが、後に残されたものへの最低限の気配りではないでしょうか?

2006.09
11 相続時における
   預貯金の名義変更手続きのお話

 相続が発生し、被相続人(亡くなった方)名義の預貯金がある場合、相続人への名義変更をしなければ預貯金を自由に下ろすことは出来なくなります。口座が閉鎖されると、被相続人が不動産賃貸業をしていた場合などは、借主さんから家賃の振込みをしてもらうことも出来なくなります。しかし、固定資産税等の支払は待ってくれません。今回はこの預貯金の名義変更手続きについてお話しようと思います。
 金融機関は被相続人の死亡の事実を確認すると、ただちに口座を閉鎖します。一度閉鎖されるとたとえ相続人であっても、遺産分割が終わるまでは被相続人の預貯金を引き出すことは出来ません。なぜ金融機関は口座を閉鎖するのでしょうか? 理由は、遺産分割協議が終了するまでは被相続人の財産は相続人全員の共有(つまり、誰か特定の人のものではなく全員のもの)だからです。万が一相続人の誰かが勝手に預貯金を引き出してしまうと、金融機関が他の相続人に訴えられる可能性があるからなのです。
 それではどうすれば名義変更が出来るのでしょうか? それには被相続人と相続人の関係を証明する戸籍謄本を用意し、銀行指定の書類に相続人全員の実印を押印し、相続人全員の印鑑証明を添付すれば名義の変更又は払戻し請求をすることができます。なお、被相続人が亡くなってから口座が閉鎖されるまでの間に相続人がキャッシュカード等で預貯金の引出しをしてしまうと、後になって被相続人に多額の借金があったことが判明しても、相続の放棄が出来なくなってしまう可能性がありますので注意が必要です。
 また、金融機関の手続きに関して一般的に必要となる書類は後述の通りですが、金融機関によっては必要となる書類も少しずつ違ったりするので、二度手間三度手間を避けるためにも事前に問い合わせをし、必要な書類を確認しておいたほうがよいでしょう。

○預貯金の名義変更手続きに必要な書類
【遺言書に基づく場合】

  1. 遺言書、
  2. 被相続人の除籍謄本、
  3. 遺言によって財産をもらう方の印鑑証明、
  4. 被相続人の通帳と届出印

【遺産分割協議に基づく場合】

  1. 遺産分割協議書、
  2. 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで)、
  3. 相続人全員の戸籍謄本(現在のもの)、
  4. 相続人全員の印鑑証明、
  5. 金融機関指定の払戻し請求書、
  6. 被相続人の通帳と届出印

2006.10

12 配偶者は大事にされています
 均分相続が前提である現代にあっても、配偶者は他の相続人に比べると相続に関し優遇されています。今回はこれらのうち主なものについてご紹介したいと思います。

○ 配偶者は常に法定相続人
 法定相続人は配偶者と血族相続人です。血族相続人には相続順位がありますが、配偶者は常に法定相続人となります。つまり被相続人に配偶者がいれば、その配偶者はどんな場合であっても法定相続人となるというわけです。なお、内縁関係は正式な婚姻関係にありませんので、法定相続人となりません。

○ 配偶者の法定相続分は最低でも2分の1

  1. 被相続人に子供がいる場合の法定相続分は、配偶者が2分の1、そして残りの2分の1を子供で分けることになります。子供が複数人いる場合は、2分の1を子供の人数で割ることになります。
  2. 被相続人に子供がおらず、親がいる場合の法定相続分は、配偶者が3分の2、そして残りの3分の1を親で分けることになります。
  3. 被相続人に子供も親もおらず、兄弟姉妹がいる場合の法定相続分は、配偶者が4分の3、そして残りの4分の1を兄弟姉妹で分けることになります。

     このように、配偶者には最低でも2分の1以上相続する権利があるのです。

    ○ 配偶者は相続税も安い
     例えば遺産が3億円で、これを配偶者と子供1人が相続する場合の相続税は2900万円ですが、配偶者がなく子供2人で相続する場合は5800万円です。どちらも相続人は2人であるにもかかわらず、税額に2倍の差があるのは、配偶者の税額軽減の特例があるからです。配偶者が相続するということは、同一世代間の財産移転であり、遠からず次の相続がおこるであろうということ、また、配偶者の老後の生活保障、更には財産の維持形成に対する配偶者の貢献への配慮などから軽減措置が講じられています。
     配偶者の税額軽減は、法定相続分相当額(1億6000万円に満たない場合には1億6000万円)と配偶者の実際取得分に係る相続税額のいずれか少ない金額まで軽減されます。つまり配偶者は、法定相続分までは相続税がかからないということです。

    ○ 小規模宅地等の特例も配偶者は優遇されています
     小規模宅地等の特例の適用を受ける場合には、多くの要件を満たす必要がありますが、配偶者については要件が緩く、配偶者が被相続人の所有していた居住用の宅地を相続しさえすれば、取得した宅地の240u部分について、その評価額の20%の評価(80%の減額)とすることができます。

2006.11

13 相続税と贈与税、どちらが有利?(その1) 

 相続税も贈与税も最高税率は50%です。しかし贈与税は、相続税に比べ基礎控除額が少なく、同じ課税価格であれば税率がかなり高くなっています。これは、生前贈与を利用した相続税逃れを防止するためと言われています。相続税の節税を考えた場合、相続税の税率よりも低い税率で相続財産を贈与できれば、相続税が節税できることになります。次の例をご覧下さい。

(例)相続財産が4億円で法定相続人が子供2人の場合
(4億円ー基礎控除額7千万円)×1/2=1億6千500万円となり、

相続税の税率は40%(下表参照)となります。したがって、贈与税の税率が30%以内で贈与することができれば、相続税の節税になります。この場合、贈与税の課税価格600万円と基礎控除額110万円を足した710万円までであれば、贈与したほうがトクという事になります。たった710万円と思うかもしれませんが、贈与は毎年行うことができるため、10年で7千万円以上の相続財産の移転ができてしまうわけです。
 しかし、贈与後3年以内に相続が発生すると、その贈与財産は相続財産に含められて相続税が計算されることになっています。したがって、病気になったので急いで贈与をして相続財産を減らしたとしても、3年以内に相続が発生すれば贈与による節税効果はないことになります。

2006.12

14 相続税と贈与税、どちらが有利?(その2) 

 今回は贈与税の中の特例のうち、贈与税の配偶者控除のお話です。

○長年連れ添った夫婦には特典があります
贈与税の配偶者控除とは、配偶者が居住用不動産の購入またはその建築資金を贈与された場合、贈与された金額から2千万円を引いたところで贈与税を計算するという制度です。さらに、通常の基礎控除である110万円も同時に引けますので、この特例を使うと、合計で2千110万円まで贈与税がかからないことになります。(贈与税はかかりませんが、不動産取得税、登録免許税等はかかりますので注意が必要です。)

○贈与税の配偶者控除を受けるためには
婚姻期間が20年以上であることが大前提です。いわゆる内縁関係であった期間は入りません。また、贈与税の配偶者控除は同じ配偶者に対して一生に一度しか使えません。したがって、2千万円のうち一度に1千万円分しか使わなかったとしても、後で残りの1千万円分は使えないということです。しかも、贈与財産は何でもよいと言うわけではなく、居住用不動産又は居住用不動産の取得資金のいずれかでなければならず、さらに贈与を受けた年の翌年3月15日までにその居住用不動産を居住の用に供し、その後も引き続き居住する見込でなければなりません。

○贈与者が3年以内に亡くなってしまった場合は?
相続開始前3年以内に被相続人から贈与された財産がある場合、通常の贈与ではその贈与財産も相続税の課税価格に持ち戻して計算することになっています。しかし、贈与税の配偶者控除を適用した贈与は、たとえ贈与をした年に亡くなってしまった場合でも、持ち戻し計算の対象とはなりません。

○居住用不動産と取得資金贈与のどちらがオトク?
ほとんどの場合、居住用不動産の贈与の方が有利になります。理由は、贈与する不動産の価額は相続税評価額によりますので、土地は路線価(時価の約8割)、建物は固定資産税評価額(建築価格の約6割)に対しての課税となるからです。

○その後譲渡した場合にもオトク
この特例を適用して、居住用財産を夫婦の共有財産(夫婦共有にしておくことがポイントです)にしておけば、自宅を売却する時、居住用財産を譲渡した場合の3千万円の特別控除を夫婦両方で適用することができ、合計で6千万の売却益まで譲渡所得税がかかりません。3千万円の特別控除は、土地の場合、家屋とともに譲渡する土地に限られるため、居住用不動産を配偶者に贈与する際には、家屋部分も一緒に贈与しておくことが必要です。

2007.1

15 相続税と贈与税、どちらが有利?(その3) 

  通常の贈与(以下「暦年贈与」)は、贈与を受ける方一人当たり年間110万円まで贈与税はかかりません。これは前回まででお話しました。贈与にはこの暦年贈与の他、相続時精算課税の贈与(以下「特例贈与」)があります。今回はこの相続時精算課税のお話です。

○相続時精算課税制度とは?
 この制度の対象となるのは、贈与する人が65歳以上の親(住宅取得等資金の贈与の場合は65歳未満でもOK)、かつ、贈与を受ける人が20歳以上の子で、2千500万円(住宅取得等資金の贈与の場合は3千500万円)まで贈与税がかからず、2千500万円(3千500万円)を超えると、超えた金額に一律20%の贈与税がかかる制度です。大きな特徴としては、暦年贈与が相続開始前3年以内の贈与を相続財産に合算して相続税を計算するのに対し、特例贈与分は期間にかかわらず全て相続財産に合算することです。また、一度特例贈与を選択してしまうと一生特例贈与を継続しなければならないため、特例贈与の利用に当たっては専門家に相談されることをお勧めします。

○相続時精算課税のメリットは?
(1)親の相続まで待たずに、早い段階で大きな財産を移転することが可能
 生前に財産を移転することが出来る
       →生前に遺産分割ができる
(2)相続対策にも場合によっては有効

  1. 将来値上がりしそうな財産を移転
          →相続税の節税が期待できる

    相続時精算課税制度は相続時に全ての特例贈与分が相続財産に合算されますが、この合算される価額は贈与時点の価額であるため、相続時に値上がりしている場合、この値上がり分は節税効果があったことになります。
  2. 収益物件を早期に移転 
     →次世代の財産作り(相続税も節税)が可能

    アパートなどの収益物件を移転し、相続財産から除外、収益は次世代の子供が享受する。

○相続時精算課税のデメリットは?
 この制度の適用を一度受けると相続時まで継続して適用しなければならないという点です。この制度のメリットとしてとり上げた節税効果も、財産の価値が下がってしまった場合には、贈与しなかった場合に比べ相続税を多く納めることになってしまいます。
 しかし、そもそも相続税がかからないような場合にはお勧めです。贈与時の価額が相続時の価額よりも高かろうが安かろうが、相続税自体がかからないためです。

2007.2

 亥年に思う 

  年明けから、ひと月が経ちました。欧米では2007年ということで単に数字だけのものですが、日本ではその年ごとに姓もあり名もあります。おもしろいですね。
 今年は、姓は丁 (ひのと)、名は亥 (い) です。

丁亥 (ひのとい)の年はどんな年?
丁亥は60番中の24番で社会の一巡の中では、比較的若い時期に当たっています。そして幹にあたる丁は、一点に打ちこむくぎの頭を描いたもので十干の中で4番目という逞しい成長を表わしています。
 亥は、十二支の最後であり、猪 (豚) そのものではなく、その骨組 (骨格) を表していて、全体を網羅している・固い という意味があります。核(植物のかたいカラ)、該 (言葉により全体に行きわたらせる)、孩 (骨ができたばかりのちのみご)、骸 (むくろ) など固い・全体的な意味を持つ言葉があります。時刻でいえば午後9〜11時の2時間。歴代の総理大臣の指南役で、平成の元号を考案したともいわれる安岡正篤氏は「亥」を「何が発生するか分らないが、発生すると並の爆発ではない」としています。このようなことから、丁亥の年は幹 (丁)に当たる基本的な仕組みが若々しさから、成熟をむかえる中で、枝 (亥) に当たる部分か、一部爆発的に突出して伸びる状態とも考えられます。
 最後に、十二支の動物の順番のいわれとして次の様な話があります。現在の十二支 (子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥) プラス猫がある時、一斉にヨーイドンと競争をしたそうです。この時、猫がビリとなって十二支に入れなかったそうです。鼠は、スタートと同時に牛の角に飛び乗りゴール寸前でとびおり見事一番にゴールインということで、鼠(子)が十二支の先頭になったということです。

2007.3

16 土地活用と相続税対策 

  「土地活用の一環としてアパートを建築すると相続税対策になる」といったお話をよく耳にします。今回はこのアパート経営と相続税対策のお話しです。結論から申し上げますと、自己資金であれ借入金であれ、アパートを建てればその土地及び建物について、何もしなかったときに比べ評価額が下がり、相続税は安くなる可能性があります。

○アパートを建てることによるメリットは?

  1. 土地の評価額が更地の時に比べて低くなります。地域により異なりますが、更地価額の約8割の価額で評価されます。
  2. 建物の評価額が実際の建築費に比べ低くなります。地域により異なりますが、建築価額の約4割の価額で評価されます。これは建物の場合、固定資産税評価額を元に評価しますが、この固定資産税評価額は建築費の約6割の評価額になり、さらに借家権を考慮することにより、固定資産税評価額の7割(関西の一部地域を除く)の評価とされるためです

○デメリットはないのか?

  1. アパートを建てた時には相続税対策になっていたものの、10年・20年と経つうちに収益が貯まってしまい、逆に相続税が増えてしまうことも考えられます。
  2. 相続開始時に空室があると、空室部分の借家権は考慮されず更地であったのと変わらなくなってしまうことも考えられます。
  3. 土地の上に建物が建ってしまうので、納税用(物納や売却)として利用することが難しくなり、また、遺産分割の際にも制約が生じます。

○相続税の納税という観点から
 相続対策の優先順位は1.争族対策、2.納税資金対策、3.相続税対策であることは以前にもお話したとおりです。相続税の納税という観点から考えると、アパートの土地建物は物納が認められにくく、多額の借入金によりアパートを建築した場合には、売却できたとしても借入金を返済すると納税までは回らないことがほとんどです。したがって、相続が発生した場合に納税資金が足りない事が予想される場合には、事前に十分な検討が必要です。まずは保有財産で納税(売却あるいは物納)が出来るかどうかを確認し、それ以外の(遊休)土地等をいかに有効活用するかを検討すべきであると考えます。

2007.4

17 不動産を共有名義にする場合の注意点 

 ○夫婦で家を買う場合の注意点
 
夫婦でお金を出し合って家を買うことはよくあることです。この場合には原則として、支払ったお金の割合に応じた持分で登記しなければなりません。例えば、夫婦で5千万円の不動産を購入した場合で、夫が2千500万円、妻も2千500万円負担したとしたら、購入した不動産の2分の1を夫名義に、2分の1を妻名義にするということです。
 もし実際に負担した金額と違う割合で登記した場合、贈与税の課税関係が生じる場合があります。例えば、5千万円の全てを夫が負担したのに、2分の1を妻の名義で登記すると、2千500万円分を夫が妻に贈与したとみられ、970万円の贈与税がかかるということです。これに類似したよくあるケースとしては、子供が家を買うときに親がお金を出し、全て子供名義で登記してしまう(親が払った分を親の持分として登記しない)ケースも同様です。

○アパートを建てる場合の注意点
 
例えば、父の土地の上に1億円のアパートを建てる場合で、父、子のそれぞれが5千万円の資金力があるとします。この場合、

  1. 支出した金額に応じて2分の1の共有にする
  2. 金銭消費貸借契約書のもと貸付を行うことにより、 
     父または子の単独名義にする
  3. 相続時精算課税制度により子の単独名義にする

    以上の3通りが考えられます。

 注意しなければならないのは、アパートなどの収益物権を共有にした場合、家賃収入は建物の所有者に帰属することになりますので、家賃収入は建物の持分の割合で按分する必要があるということです。例えば、2分の1の共有なのに全て子の収入とした場合、その収入の2分の1を父から子に贈与した事になるのです。
 また、相続税を考えた場合には、アパートを共有名義にした場合、父の建物の持分については土地が「貸家建付地」となります(「貸家建付地」の場合、更地の場合の約2割の評価減になります)。一方、子の建物の持分については土地部分の評価減はありません。したがって全て父の名義にした時と比べると相続税評価額が高くなります。相続税のことだけを考えれば、父の単独名義にして土地の評価を下げたほうが有利となります。しかし、相続税がかからないと予想される場合や子が相続税の納税資金を貯めるといった場合には、共有名義又は子の単独名義にして子が家賃収入を得ることも考えられます。

2007.5

18 相続人であっても相続できない人がいる? 

相続は被相続人が死亡することにより開始します。相続人は自ら相続の放棄をしない限り、相続権を有することになります。しかし相続には、相続ができない場合も存在するのです。今回は相続人の欠格・排除のお話です。

○相続人の欠格
 相続争いで優位になるため他の相続人を殺したり、被相続人を恐喝して自分に有利な遺言を書かせたりすることはあってはならないことです。このような場合には、相続人の欠格事由に該当し、相続権を失うことになります。相続人の欠格事由は民法(891条)により定められており、これに該当する場合には相続人となることができないと規定されています。欠格要件はおおよそ次のとおりです。

  1. 故意に被相続人や他の相続人を殺害し(未遂を含む)、刑に処せられた者
  2. 被相続人が殺害されたことを知って、これを告発・告訴しなかった者
  3. 詐欺・脅迫によって被相続人が相続に関する遺言をし、これを取消し、または変更することを妨げた者
  4. 詐欺・脅迫によって被相続人に相続に関する遺言をさせ、これを取消させ、または変更させた者
  5. 相続に関する被相続人の遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した者

○推定相続人の廃除
 例えばいつもお金をせびったり、暴力を振るったりする相続人には財産を相続させたくない場合、被相続人の意志で推定相続人を廃除することができます。排除によりその推定相続人の相続権は失われます。排除ができるのは次のような場合です。

  1. 被相続人に対しての虐待や重大な侮辱をした場合
  2. 推定相続人に著しい非行があった場合(犯罪を犯した等)

 このような事実がある場合、被相続人が自ら生前に家庭裁判所にその者の廃除を請求する、または遺言書に廃除の意思表示をすることにより、廃除に関する調停・審判により相続権を剥奪することができるのです。ただし、被相続人の意思表示だけで排除ができるわけではありません。家庭裁判所へ排除の申請をし、認められてはじめて排除ができるのです。
 なお、相続人の欠格及び推定相続人の排除があった場合、その者の子や孫等の代襲相続人がその者に代わって代襲相続をすることになります。

2007.6
19 生命保険を利用した相続税対策(その1)

○納税資金対策としての生命保険
 例えば、相続財産は自宅とアパートだけで現預金はあまりないが、相続税を納付しなければならない場合、相続税の納税資金に困ってしまうということはよくある事です。このような場合には、被相続人が生前に生命保険に加入し、受取人を相続人にしておくことで、万が一の場合でも自宅やアパートを売却することなく、死亡保険金で相続税を支払うことができるのです。

○生命保険による納税資金対策のメリットは?

  1. 死亡保険金には相続税の非課税枠があります。
     死亡保険金は相続税の課税対象となります。しかし、そのうち法定相続人の数×500万円までは非課税となります。例えば、相続人は妻と子1人で3千万円の死亡保険金を受け取った場合、2人×500万円=1千万円が非課税となり、残りの2千万円が他の相続財産と合算され課税対象となります。
  2. 保険の加入と同時に納税資金対策が完了します。
     保険の加入と同時に数千万円単位での納税資金が準備出来ます。
  3. 死亡保険金は現金で受け取れます。
     相続税の納税は相続開始から10ヶ月以内に金銭一時納付が原則です。したがって自宅だけを相続したような場合、納税資金がないと、自宅を売却して資金を調達することになります(延納や物納という方法もあります)

○納税資金対策で生命保険に加入する場合の注意点
 まず、相続税がどのくらい発生し、現在どのくらいの納税資金があるのかといった現状把握が必要となります。それを元に生命保険金で納付したい額を設定し、契約する保険金額を決定しましょう。
 受取人は配偶者ではなくお子さんにするのが良いでしょう。なぜなら、配偶者は軽減措置がある関係上、配偶者が多額の相続税を負担するケースはあまりないと考えられます。また、配偶者が受け取った生命保険金で、子の負担すべき相続税を納めると、親が子に贈与したと見られ、贈与税が課税されることがありますので注意が必要です。
また保険には数多くの種類があり、複雑多岐にわたっておりますので、生命保険を利用して相続税の納税資金対策をご検討の際には、税理士等の専門家にご相談されることをお勧めいたします。

    2007.7

    20 生命保険を利用した相続税対策(その2)

    ○生命保険を利用して相続税を節税し納税資金も確保する
     生命保険の掛け金相当額を金銭で子や孫に贈与し、その資金で子や孫が契約者かつ受取人、親(被相続人)を被保険者とする生命保険に加入します。このようにすることで、贈与した金額が毎年相続財産から減ることとなり、万が一の時に死亡保険金を受け取った場合でも、死亡保険金は相続税の対象とはされず、子や孫の一時所得として所得税・住民税の対象となります。このように、例えば毎年一人当たり110万円(年110万円までの贈与は非課税です)の保険料相当額を子や孫5人に贈与することにより、10年で被相続人の財産が5千500万円移転できることになります。また、5人の方が受け取った死亡保険金は全額相続財産には含まれません。

    ○掛け金を贈与する場合の注意点
     あとで税務署に調べられてもよいように、きちんと書類の整理をしておくことが重要です。この場合の注意点としては、

    1. 贈与契約書を毎年きちんと作成する。
    2. 110万円以下の贈与で贈与税が出なくても贈与税の申告書を毎年提出し、申告書の控を保管しておく。
    3. 生命保険料については被相続人の生命保険料控除とせず、子・孫の生命保険料控除とする。
    4. その他贈与の事実が確認できるようにしておく。

     上記のようにしておくことで、贈与事実の心証が得られれば、税務署側もこれを認めることにしているようです。また、保険料は基本的に毎年一定額ですから、毎年一定額の保険料相当額の現金贈与を繰り返すことが、定期贈与と判定されないかとの議論もありますが、保険料相当額の贈与は、保険事故(前記の例では親の死亡)が発生すればその贈与は中止されるであろうから「単年贈与」の積み重ねと判断されるのが妥当であるとの見解が一般的です。
     また、被相続人が亡くなる3年以内の贈与は相続財産に含まれてしまうため、出来るだけ早期にスタートし、長期間に渡って行わないとこれらの効果は薄れてしまうことにも注意が必要です。
     この方法で相続税を節税し、かつ、納税資金を確保することが可能ですが、相続税と所得税・住民税をあらかじめ計算しておかないと逆に税金を多く納めてしまうことにもなりかねないため、実行に当たっては税理士等の専門家に相談されることをお勧めいたします。

    2007.8

    21 相続人の中に未成年者がいる場合の遺産分割協議

     相続人の中に未成年者がいる場合には、通常、親権者である親が未成年者である子の代理人として遺産分割協議に参加することになっています。しかし、親権者が未成年者とともに共同相続人である場合には、親権者が未成年者の代理人として遺産分割協議に参加することはできません。
     共同相続人である親が未成年者である子の代理人となり遺産分割協議を行った場合には、自分の相続人としての地位と相続人である子の代理人としての地位を兼ねることになり、子の代理人としては財産を全くもらわない意思表示をし、自分がすべての財産を相続する旨の遺産分割協議も出来てしまうことになり、子に不利益が生じます。このような利益相反行為を禁止するために、共同相続人である親は未成年者の子の代理をすることが出来ないことになっているのです。
     例えば、夫が亡くなり、妻、長男(未成年)、長女(未成年)が相続人である場合がこれに該当します。この場合には、妻は長男・長女のために特別代理人の選任を家庭裁判所に請求しなければなりません。このように未成年者が2人いる場合には、それぞれについて特別代理人の選任が必要となります。そして選任された特別代理人は、未成年者の代理人として、他の相続人との間で遺産分割をすることになります。
     また、未成年者の子がおり、利益相反となるにもかかわらず、特別代理人の選任をしないで親権者が遺産分割協議をした場合には、無権代理となるため、その遺産分割協議は無効となります。このように、特別代理人が選任されて初めて有効な遺産分割協議をすることが出来るようになるのです。
     但し遺言があれば、前記のような場合でも、面倒な手続きを踏まずに相続手続きを行うことが出来ます。

    2007.9

    22 相続放棄についての注意点

     ○相続放棄とは?
     相続財産の中にはプラスの財産(土地建物や現金預金など)のほか、マイナスの財産(銀行借入金など)があり、通常プラスの財産でマイナスの財産を返済しきれない場合には、相続放棄の手続きをすることになります。相続の放棄をすると、マイナスの財産を相続しなくても済みますが、もちろんプラスの財産も相続することはできません。
     相続の放棄は、各相続人が、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所に対して相続放棄の申述書を提出し、それが受理されることにより、相続放棄申述受理証明書が交付され、この証明書が相続放棄をした証明書になります。この期間内に申述しなかった場合は、単純承認したものとみなされますので注意が必要です。なお、3ヶ月以内に放棄をすることが出来ない特別の事情がある場合には、家庭裁判所に相続放棄のための申述期間延長を申請するこ とにより、期間を延長してもらえる場合があります。


    ○相続放棄と限定承認
     限定承認とは、プラスの財産の範囲内でマイナスの範囲の財産を返済することができる制度です。相続の放棄は各相続人が単独で行うことが出来ますが、限定承認は相続人全員で行わなければならないため、1人でも放棄した場合には限定承認はできなくなりますので注意が必要です。

    ○相続放棄と代襲相続
     相続の放棄をすると、その相続人は初めから相続人ではなかったことになり、この場合代襲相続は起りません。例えば妻と子が法定相続人の場合、通常は子が先に亡くなっていれば孫が代襲相続しますが、子が相続放棄した場合は、孫は代襲相続することはできません。この場合、直系尊属(祖父・祖母)がいれば法定相続人は配偶者と直系尊属、直系尊属も相続放棄すれば法定相続人は配偶者と兄弟姉妹となります。相続の放棄があると、上記のように相続順位が変わってきますので、今まで相続人ではなかった人がいつの間にか相続人になってしまうということが起ります。
     ここで借金の話に戻りますが、誰も多額な借金は相続したくはありませんので、通常相続の放棄をすることになります。この相続放棄により相続順位が代わり、知らぬ間に相続人になってしまっており、借金まで相続してしまっている!なんてことがありますので、身内で相続放棄があった場合には注意が必要です。

    2007.10

    23 名義預金等にご注意を!

     今回は、相続税の税務調査でもっとも指摘されやすい事項である、名義預金等についてお話したいと思います。
    ○名義預金ってなに?
     名義預金とは、形式的には配偶者や子供などの家族名義で預金しているものの、管理の状況や家族の収入などから考えれば、家族がその金額の預金をもっていることが不自然であるなど、単に家族に名義を借りているに過ぎない預金のことをいいます。税務上名義は被相続人のものではなくても、実質的に被相続人に係る預金と認められるものは、被相続人の相続財産に該当し、相続税の課税対象となります。このような名義預金に類似するものとして、株式や保険なども同様に名義株式や名義保険とみられる可能性があります。

    ○名義預金等を疑われる場合とは
     相続税の税務調査の際、名義預金等は問題となることが特に多く、以下のような状況に該当すると名義預金等と疑われる可能性が高く、もし名義預金等と判断されれば、修正申告が必要になります。

    1. 家族の収入に見合わない
              家族名義の預金等がある
       例えば、専業主婦であった配偶者が何千万円もの預金を持っていたり、未成年である孫の預金が数百万円あったり、収入がないにも関わらずこれだけの預金があるのは常識的に考えてありえないことです。このような場合、名義預金等を疑われる可能性が高く、必ず預金の出所を調査されます。
    2. 通帳等の印鑑が同一
       家族名義の通帳等の印鑑がすべて同一の印鑑を使用しており、しかも、通常被相続人が自分の預金に使用しているものと同一である場合には、名義預金等を疑われる可能性が高いです。
    3. 通帳等の保管(管理)の状況
       被相続人が家族名義の通帳等をすべて保管(管理)しており、名義人はそのような預金等があることすら知らなかったという場合には、当然、名義預金等と判断されます。
    4. 贈与税の申告の有無
       被相続人の通帳から多額の預金の引き出しがあり、家族名義の通帳に移動している場合で、贈与税の申告がない場合は、名義預金を疑われる可能性が高いです。

       名義預金等について気になることがございましたら、相続が発生する前に、専門家である税理士に相談をされることをお薦め致します。

     

    2007.11

    24 認知があった場合の相続権

     ○嫡出子と非嫡出子とは?
     法律上、正式な婚姻関係にある男女の間に生まれた子を嫡出子(ちゃくしゅつし)、そうでない子を非嫡出子と言います。非嫡出子の場合、父と子の法律的な親子関係は、父が子を認知してはじめて生じます。これに対し、母と子の法律的な親子関係は、分娩の事実によって証明されますので、母の認知は必要ありません。認知には、父の意思で自分の子として認める「任意認知」のほかに、裁判により認知を求める「強制認知」があります。任意認知は、生前に行うか、または遺言によっても行うことができます。強制認知の訴えは、父の生存中もしくは死亡後3年以内に行う必要があります。

    ○非嫡出子の相続権は?
     非嫡出子に父の相続に関する相続権があるか否かは、その父の認知を受けているか否かにより異なります。認知を受けている場合には相続権がありますが、法定相続分は嫡出子の2分の1となります。認知を受けていない場合には法律上の親子関係がありませんから、相続権はありません。

    ○認知があった場合の遺産分割
     認知が被相続人の死亡前になされていたのであれば、その認知された子を含めて遺産分割協議をすることになります。当然、認知された子を除外して行われた遺産分割協議は無効です。認知が被相続人の死亡後になされたような場合、すなわち裁判による死後認知や遺言による認知がなされた場合には、認知された子がいることが分からずに遺産分割協議を終えている場合がありますが、この場合には、遺産分割協議そのものは有効で、認知された子は価額による支払の請求権のみを有することになります。つまり、遺産分割協議のやり直しは行わず、認知を受けた子から他の相続人に対してその相続分に応じた価額の支払を請求することになります。

    ○相続分の具体例
     下の例の場合、妻と子A(嫡出子)とともに、子B(非嫡出子)も相続人となります。この場合の法定相続分は、妻が2分の1、子Aが3分の1、子Bが6分の1となります。
    例えば、父の遺産が1億2000万円の場合、各人が法定相続分で相続した場合、次のようになります。

    妻……6000万円
    子A…4000万円
    子B…2000万円
    愛人・子C……0円

    2007.12

    25 親族間で売買する場合には低額譲渡にご注意を!

     親族などの特殊関係人の間で不動産を売買する場合、親族なので当然時価よりも低い金額で売買したくなるのが人情です。しかしその売買金額によっては低額譲渡と認定され、贈与税等の思わぬ税金が課税される可能性があるため注意が必要です。

    ○低額譲渡ってなに?
     低額譲渡とは、時価よりも低い価額の対価による譲渡を言います。個人間の低額譲渡の場合、時価と譲渡価額の差額が贈与とみなされ、買主側にその差額に対する贈与税が課税される可能性があります。これは相続税法7条に、時価よりも「著しく低い価額」で財産を譲り受けた場合については、時価とその対価との差額に相当する金額を贈与によって取得したものとみなし、贈与税を課税するという規定があるためです。 
     それでは一体、譲渡価額が時価よりもどれくらい低ければ、「著しく低い価額」に該当するのか?という点について、条文上明確な基準はなく、「著しく低い価額」に該当するかどうかは、個々の取引について、その取引の事情や当事者間の関係等を総合的に勘案して判断することになっています。

    ○個人から同族会社(法人)に低額譲渡したら?
     節税のため、個人からその個人が社長を務める同族会社に不動産を譲渡することはよくあることです。この場合、出来るだけ安い金額で同族会社に譲渡すれば、譲渡所得税も安くなり、同族会社も少ない資金で不動産を購入することができ、一石二鳥と考えがちです。しかしこの場合も、低額譲渡に注意が必要です。売り手である個人が、時価の2分の1未満の対価により譲渡した場合、その譲渡は時価で譲渡したものとみなされ所得税が課税されます(所得税法59条)。では時価の6割ならば2分の1未満に該当しないため低額譲渡にならないかといえばそうでもありません。税法には「同族会社等の行為又は計算の否認」の規定があり、同族会社を通じて行った取引により、その株主等の税金を不当に減少させた場合には、税務署長はその取引がなかったものとして課税するという伝家の宝刀があるからです。
     したがって、時価よりも低い価額で財産の譲渡した場合、「著しく低い価額」の認定をめぐり、税務署との間で裁判にまで発展することがあります。特に親族や同族会社に不動産などを譲渡するような場合には、後々問題にならないように、専門家である税理士に相談されることをおすすめいたします。